もういいとなぜ言えないのか
なぜすべてをもういいと言えないのか
雲が山肌を駆けのぼっていく
あの迷いのなさを私はうらやむ
沼気のごとき執着心すら
足許の染みとなり判別できない
あの花は咲いていないのかもしれず
この結び目はほどけているのかもしれず
今日は昨日かもしれず
私はひとりなのかもしれない
喜びはほこりのように指をすり抜け
微笑みはいつもガラス越し
声は雑音にまぎれて
後ろ姿は影に溶ける
月を捕まえたくて夜飛ぶ鳥は
太陽から逃げたくて昼飛ぶ鳥をあわれんでいる
花をもっとよく見たくて顔を寄せた
よく見えないので花を手折り
花弁をひとひらずつ確かめた
花は見えないままに失われた
tagPlaceholderカテゴリ:
コメントをお書きください