黒いコートがはだけて赤いセーターの色がにじんだ。にじんだ赤は体内の色だった。どす黒くにじんだ赤い体が私に覆いかぶさった。さらさらさらと垂れて流れる黒い髪が光をさえぎり吐息が生温い近さで女の目がふわりと開いた。女の口唇を求めて体を起こそうとしたとき女の爪が私の胸を切り裂いた。口唇を忘れるほどに甘美な痛みが私を襲った。口唇から首へ胸から腹へ足から爪先へと視線を奪う女の肌は静脈が透きとおり青白くうっすらと汗を浮かべて光り輝いていた。女は私に痛みを与えつづけた。私はどこが痛いのかどれほど痛いのかわからなくなった。激痛に身をよじらせひときわ大きな痛みの波にのけぞったとき傍らに転がっていた男の腕をみつけた。私は女の青白い体が赤く染まっていくのを眺めながら解体されていった。
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