輝いていた命はなにを照らしたか
命が照らした魂の影の名を知っているか
その名を死と呼ぶことを私は知っているか
そびえ立つこの黒い山の黒い森には
我が身を切り裂いた傷跡めいた谷を激流が走る
見えない湖からは悲鳴が聞こえる
絶望に殴られて死んだ魂は
絶望の森から出られずに眠れずに
絶望の森にはなにかの影が射す
影を追いかけ森を走り
影をなぞって森を歩く
影は深く濃く広がっていた
パンと水の匂いがした
影のむこうから匂いがした
生きている匂いがした
この森にいるかぎり不自由はないのだが
この森にはひとつだけ自由がない
この森からは戻れない
戻りたいのかと自問し
戻りたくないと自答する
幸せかとは問わずに
谷を望む大きな岩が私の棲家
そこから臨める光景こそが
私をこの森に追いやったもの
私は自分の姿を見分けた
彼は柔らかいベッドに眠っていた
大きなベッドは小さな赤ん坊のつま先を踏んでいた
私は自分の母を見分けた
彼女は産んだ私に生を与え
産まなかった私に死を与えた
大陸が襲われている
小さな島がなぎ倒されている
海路は弾道に似ている
信じているという言葉が聞こえた
たくさんの人々の声で
口々に言う言葉が聞こえた
だが黒い山に跳ね返るこだまには
裏切られたと聞こえるのだ
こだまの声はそう聞こえるのだ
大きく重く反り返った刃が首を刎ね
老人が電話口でつぶやいて十万人を焼き殺す
老人は拍手で迎えられる
兵士が銃を構えて引き金を引く
銃口は自分の後頭部を狙っていたのに引き金を引く
彼は死んだ
私は食事をしていた優雅な食事を
飲んでいたスープは温かくうまい
見知らぬ誰かの血とは気づかない
人が集まり小さな村を焼き払うか決めている
議論は真ん中あたりでひそひそと
その他大勢は無言のままに賛同するだけ
泣いている人がいた
慰めている人も泣いていた
眺めているだけの人も泣いていた
鳥は突如舞い上がり黒い山を越えていった
決断か本能か窺い知ることすらかなわぬ意思が舞い上がり
生きる意思が飛び去った
鳥の輝きはこの森に影を射した
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oretasakana (金曜日, 30 12月 2011 17:15)
(日曜日, 18 12月 2011 23:53)
読み返してみると完成度は高くないが、ある種の決意が感じられる。
この手の決意は、こうして書き留めておかないとならない。
そして、伝えなければならない。