耐熱ガラスのビーカーに焦げて残った問いかけは
解体工事に紛れて捨てられた
知っていたはずのさまざまなことごとは
白色に溶けて蒸発したようだ
時が影にささやき声で
ゆっくり動けと正解を教えた
だまされていたのはどうやら私だったらしい
くらむ目に映るものはみな背を向けていて
いまさら追いつけそうもなかった
真夏の午後に
遠くから遠くへ消えていくサイレンの音と
千切れた足枷のように引きずってきた痛みとを
重ねあわせたのだがそれは叶うにはあいまいすぎる願いだった
削られていくだけの川床の巨岩のような
真夏の午後が沈んでいた
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