雨のやみかけた夜の森を歩く

雨のやみかけた夜の森では

水の葉を打つ音が道をつなぐ

木々も土も葉も水も動きまわる

森はどこかにある中心から濃密に始まり

広がりながら境界線をはぐらかす

一歩ごとに深くなる

雨のやみかけた夜の森を歩き続ける

 

 

 

 

 この少し古い作品を展示室に飾るに至った経緯を書こう。

 ほぼ毎日なにかしら書いているので、作品の数歩手前のようなものはいつも増え続けている。書きながら、時々、前に書いた作品のことを思い出して新しいひっかかりを感ずるときがある。そのうちのひとつがこれだった。そして、ほんの少し書き直したら一か所書き損じた。

 一方最近、新しい詩を一編、粒の大きなものを書きたくて、書いていた。それを友人に読んでもらわねばならず、そのときには同時にまったく違うものを一つ読んでもらいたいと思った。そこで、ちょうど書き直したばかりの雨のやみかけた夜の森を持って友人に会いに行ったのだ。

 最後に激しい雷雨が降った。安普請の部屋を震わせる雷鳴を直に聴きたくて役に立たない傘をさして外へ出た。空が割れた。夕闇の家並みが真っ白に爆ぜた。家の前に立っているだけでほぼ全身ずぶ濡れになった。どうせ濡れてしまったのだから森へ入ろう、と思った。重たい雨の跳ね返りを踏みながら、雷が叩き割る空を見上げながら、私は森へ向かった。暗い森は、一瞬の雷光に白く何度も燃え上がり、私の視界はその度に白く燃え尽きた。

 こんな夜があったのだからこの作品をもう一度展示室へ飾ろう。

 これが経緯。

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